汽水域とフナの関係性について|汽水とフナ

陸水学

今回は「汽水域」について説明します。

フナは川に生息する魚ですが、海に近い河口や宍道湖のような汽水湖でも見られることがあります。
そんな少し変わった水域についての解説と生息する理由について触れていきましょう。

汽水域とは?

宍道湖

汽水域とは、海水が流れ込む湖や河口など、淡水と海水が混じり合う場所のことです。
この場所には、川から流れてくる栄養分がたくさんあり、特別な生態系が存在しています。

汽水域は、陸地と海が交わる場所でもあり、特に宍道湖や中海のような汽水湖では、人々の活動による影響を受けやすい場所でもあります。

これらの湖は、豊かな自然のバランスの上に成り立っています。

汽水の塩分濃度

汽水とは、川と海の水が混ざった水のことですが、その塩分濃度はどれくらいなのでしょうか?
淡水は塩分が0〜0.05%、海水は塩分が3〜3.5%含まれています。

汽水は、淡水と海水の中間で、0.05%〜3%の塩分が含まれる水のことを指します。

先生
先生

汽水湖の塩分濃度は場所によって違います。

例えば、島根県にある汽水湖では、海に近い中海の塩分濃度は1.5%ですが、川からの水が多い宍道湖では0.3%と、比較的低いです。

中海には海水魚に近い魚が、宍道湖には淡水魚に近い魚が生息しています。
ちなみに、味噌汁の塩分濃度は約1%と言われています。

汽水環境の豊かさ

汽水環境の大きな特徴の一つが「豊かさ」です。
陸地から流れてきた栄養分が川によって運ばれ、汽水域でプランクトンが育ち、多くの生き物が集まります。

宍道湖や中海などの汽水湖は、川の河口にできる汽水域よりも広いため、
さらに多くの生き物が住んでいます。

汽水域は繊細さん

しかし、汽水環境はとても繊細で傷つきやすい場所でもあります。

宍道湖や中海のような汽水湖では、水の入れ替わりが川と比べて遅いため、一度汚れてしまうと、元に戻るまで時間がかかります。
また、栄養分が多すぎると、湖底にヘドロがたまり「富栄養湖」となり、水が汚れてしまうことがあります。

汽水域と人間の関わり

汽水域が人間の活動によってどのように変化しているのか解説していきましょう。

汽水域は、川の水と海の水が混じり合う場所です。この特別な環境は、多くの生き物にとって大切な住みかです。しかし、近くに人間が住んだり活動したりすると、汽水域の環境が変わってしまうことがあります。

汽水域を守るために

汽水域の環境を守るためには、人間の活動が自然に与える影響を減らすことが大切です。たとえば、工場や家庭からの排水をきちんと処理したり、ゴミを川や海に流さないようにすることが大切です。また、開発をするときには、汽水域の自然環境をできるだけ残すように計画を立てることも必要です。

汽水域は、生き物たちにとって重要な場所であり、私たち人間もその恩恵を受けています。そのため、この特別な環境を大切に守っていくことが重要です。

フナが汽水域に適応できる理由

ゴビウスの汽水水槽にいるフナ

フナ自体は純淡水魚なので、基本的には淡水しか生息できないとされていますが、汽水湖や河口付近で姿を見ることもできます。

ここからはフナが汽水域でも生息できる理由について解説していきましょう。

塩分に対する耐性

普通、魚は淡水(川や湖)か海水(海)にしか生息できないことが多いです。
これは、魚の体がそれぞれの環境に合わせて進化しているからです。

汽水域では、淡水と海水が混ざり合うため、塩分濃度が高くなります。

一応、フナは塩分に対する耐性があり、塩分濃度が低いところや少し塩分があるところでも生きていける体の仕組みにより、汽水域でも問題なく生活できるのです。

とは言っても完全に海水や海に限りなく近い塩分濃度では生活することはできませんから、
自分に合った塩分濃度の水域での生活をしていることが多いですね。

一応、島根県の汽水湖では中海よりは宍道湖、福井県の三方五湖では三方湖や菅湖、久々子湖で姿が見られています。

先生
先生

完全な汽水域というよりは淡水の流入がある環境に適していると言えるでしょう。

生態的な利点

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女の子
女の子

わざわざ汽水域で生活するメリットはあるんですか?

先生
先生

フナが汽水域に生息することには、いくつかの利点があります。

まずはエサが豊富な点でしょう。
汽水域には川から流れ込んだ栄養分が多く集まり、それをエサにするプランクトンのような小さな生き物がたくさんいます。フナはこれらのプランクトン等を食べることで、豊富な食料を手に入れることができます。

河口の付近は砂の中にゴカイが生息しており、それを食べて生活しているフナは大きく成長する個体が比較的多い印象を受けますね。

次に流れが緩やかな環境である点です。
フナはそこまで泳ぐ魚ではありませんので、海に近く流れの少ない場所はフナにとって適しているとされていますね。

また、フナを食べるような大型魚が比較的少ないこともあり、フナにとっても安全な場所でもあります。

以上より、汽水域に適応することで、フナは生き残りやすくなり他の魚があまりいない環境で繁殖するチャンスを得られるのです。

フナがよく見られる汽水域

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フナがよく見られる汽水域として有名なのは上でも紹介した島根県の宍道湖や福井県の三方五湖の中の菅湖や久々子湖でしょうか。

あとは霞ヶ浦や浜名湖でも確認されていますね。

まとめ

ということで、今回は汽水域と生息しているフナについて解説していきました。

フナが汽水域に適応できるのは、塩分に対する耐性を持っていることと、豊富なエサと安全な環境が提供される生態的な利点があるからです。

これらの理由から、フナは淡水だけでなく、汽水域でも元気に生活することができるのです。

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