
今回は「鰭式」についての表記とフナの分類における鰭式について解説していきます。
魚の分類において重要な指標の一つに「鰭式(きしき)」という方法があり種の特徴を明確にするために使われる手法です。

魚の種類を調べるために「鰭(ヒレ)」を見る手法なんですね。

この記事では、フナを例に挙げながら、鰭式の具体的な表記方法や背鰭の鰭条の数え方について解説します。
これを読めばフナの見分け方や分類に役立てられるでしょう。
鰭式とは何を表すものか


鰭式とは、魚の鰭にある鰭条を数えることです。
鰭式
魚の鰭にある鰭条の数や種類を、記号と数字で表したものです。
見た目だけでは区別しにくい魚でも、背鰭や臀鰭の鰭条数を調べることで、分類や同定の手がかりになります。
図鑑や専門的な文献では、魚の特徴を短く示すために鰭式が使われます。



解剖しなくても写真や映像を使って調べられるのは
手軽で便利な方法ですね。
魚のヒレの骨の数は種類ごとに違うので、鰭式を使うと他の特徴と合わせてどの種類かを調べやすくなります。
今でも新しい魚を見つけたり、生き物がいる場所を調べたりする時に、鰭式が役立っています。

フナ類の見分け方については「フナの種類と見分け方」の記事も参考になります。

棘条・軟条・分岐軟条の違い
フナ類では、特に背鰭の分岐軟条数が見分け方の手がかりになります。

棘条(きょくじょう)
棘条は硬くてしっかりとした構造を持ち、魚の鰭を支える役割を果たします。
その強固な性質により、外敵から身を守る武器としても利用されることがあります。
軟条(なんじょう)
軟条は柔らかくしなやかな構造で、動きや操作性に関わる機能を持つ部分です。
魚が泳ぐときの推進力を生み出し、方向転換やバランスの調整に役立ちます。
詳しい内容はこちらで解説しています。

鰭式での各鰭の表記
鰭式では、鰭の名前を英語の頭文字で表すことがあります。
背鰭はD、臀鰭はA、胸鰭はP、腹鰭はV、尾鰭はCと表されることが多いです。
| 鰭の名前 | 略号 | 読み方・意味 |
|---|---|---|
| 背鰭 | D | Dorsal fin |
| 臀鰭 | A | Anal fin |
| 胸鰭 | P | Pectoral fin |
| 腹鰭 | V / P2 | Ventral / Pelvic fin |
| 尾鰭 | C | Caudal fin |

ただし、文献や分野によって表記が異なる場合もあるため、図鑑や論文を読むときは凡例を確認することが大切です。
鰭条の数
それぞれの鰭の鰭条の計数の仕方ですが、鰭と体の付け根部分である基部を見て数えましょう。
鰭条は途中で分岐することもありますからね。
また、鰭には棘と軟条の2種類存在しています。
棘数の場合はローマ字で表し、軟条数はアラビア数字で表記しましょう。
表記法
- 棘数と軟条数はコンマ(,)で連結されます。
- 背鰭が2基以上あって離れる場合はハイフン(一)でつなぎます。
- 小離鯺はプラス(+)でつなぎます。
- 鰭条数に変異がある場合は波線 (〜)でつなぎます。
(例1)
臀鰭2棘13軟条=АⅡ,13
(例2)
胸鰭26軟条=Pⅰ26
(例3)
腹鰭1棘5軟条=PⅱI,5
(例4)
第1背鰭15棘、第2背鰭3棘に12軟条、8基の小離鰭=DXV-Ⅲ, 12+8
真骨魚類の鰭条は、骨質で形成されており、中央に不対の1本からなる棘条と左右1対の軟条の2種類に分かれる。
A:棘条、B:不分枝軟条,C:分枝軟条
フナの背鰭分岐軟条数の見方


フナ類を見分けるとき、背鰭の分岐軟条数は重要な観察ポイントになります。
フナは種類によって体型や背鰭の印象が異なりますが、
体色や大きさだけでは判断が難しいこともあります。
そのため、背鰭にある分岐軟条の数を確認することで、種を考える手がかりになります。
ただし、個体差や雑種の可能性もあるため、鰭条数だけで断定するのは避けるべきです。
フナ類の背鰭の鰭式一覧
| フナの種類 | 背鰭分岐軟鰭条数 |
| キンブナ | 11〜14本 |
| ニゴロブナ | 14〜18本 |
| オオキンブナ | 13〜19本 |
| ギンブナ | 13〜21本 |
| ナガブナ | 14〜21本 |
| ゲンゴロウブナ | 15〜18本 |
フナの場合は背鰭分岐軟条数を数えていきます。

背鰭分岐軟鰭条数とは、
背鰭の中で分かれている柔らかい部分の数のことです

この方法ならフナが背鰭を伸ばした写真だけでも
数えることができますね。
計数時の注意点

注意すべき点としては、背鰭の最後の軟条は分岐して2本に見えることがあります。
そのような場合は1本として数えましょう。

写真や生体を数えて15本だった場合は14本かもしれませんから、
この計測を正確に行うためには背鰭を切開しないとわかりませんね。
背鰭分岐軟条数だけで同定できる種類は、キンブナとギンブナが対象です。
最大値である20~21本だった場合のギンブナ、最小値の11~12本はキンブナだけということになりますね。

写真で数えるときの注意点

写真から鰭条を数える場合は、魚が真横を向き、背鰭や臀鰭がしっかり開いている写真が適しています。
鰭がたたまれていたり、体に重なっていたりすると、正確に数えることは難しくなります。
また、水槽の反射やピントのずれ、鰭の欠けによっても判断が変わるため、
できれば複数枚の写真を残しておくとよいでしょう。
鰭式は魚を見分けるための“補助線”
鰭式は、魚を見分けるための便利な手がかりですが、それだけで種を断定するものではありません。
体型、鱗の数、口の形、生息地、成長段階など、複数の特徴を合わせて考えることが大切です。
フナのように似た種類が多い魚では、鰭式を「分類を考えるための補助線」として使うと、観察の精度が高まります。

参考に私が実際にフナの同定作業を行った記事を載せてきます。
ご覧ください。

まとめ

ということで今回は鰭式について解説していきました。
鰭式を用いたフナの分類方法は、魚の観察をより深く楽しむための有効な手段です。

背鰭の鰭条を数えることで、少なくともキンブナやギンブナなどの
フナ類を見分けることが可能になることがわかりました。

鰭式を理解することで、フナの写真や実物を観察する際にその種を識別できる力が養われるでしょう。
ただし、背鰭の最後の軟条が分岐して見えることもあるため、正確な計測には注意が必要です。

よく見なきゃいけないのは大変ですね・・・。

今回の解説をもとに、ぜひフナの分類に挑戦してみてください。
鰭式の知識は、魚類の研究や観察において大きな助けとなるでしょう。


コメント
拝見し勉強させていただいております、石澤と申します。
鰭式の(例)について、ご教示ください。
(例1)のローマ数字が「I」、(例4)のローマ数字が「II」となってます。これは、それぞれ臀鰭2棘、第2背鰭3棘と理解しましたが、これが式の書き方になるのでしょうか?
魚のことは全く分からない素人ですので、そもそもの設定の理解が出来ていないかもしれません。
よろしくお願いします。
石澤さん、コメントありがとうございます。
私の書き方に誤りがありご迷惑をおかけしました。
石澤さんのご指摘の通り、認識に間違いはありませんでしたので、訂正いたしました。
ご丁寧にご指摘いただき、心より感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願いいたします。
読ませていただきました。参考になる記事かと思います。一つ気になる点としてギンブナの背びれ分岐軟条が13~21となっておりますが、文献(中村1969)によれば16~17となっております。どちらが正しいのでしょうか。
長岡さん、コメントありがとうございます。
確かに、文献によってギンブナの背鰭の分岐軟条の数には違いが見られますので、16〜17条が一般的とされるものの、ばらつきがあるのは確かですね。
私もいくつかの書籍を参考にしていますが、淡水魚保護協会の『淡水魚 8号』には13〜21条と記載されており、こちらも参考にさせていただいています。
ギンブナは地域による個体差が大きい魚ですので、ぜひあくまで参考程度にしていただければと思います。