フナの分類に役立つ鰭式の使い方|背鰭の特徴を見抜こう

形態学

今回は「鰭式」についての表記とフナの分類における鰭式について解説していきます。

魚の分類において重要な指標の一つに「鰭式(きしき)」という方法があり種の特徴を明確にするために使われる手法です。
鰭式を理解することで、魚の分類や識別がより詳しくなります。

先生
先生

この記事では、フナを例に挙げながら、鰭式の具体的な表記方法や背鰭の鰭条の数え方について解説します。
これを読めばフナの見分け方や分類に役立てられるでしょう。

鰭式とは

先生
先生

鰭式とは、魚の鰭にある鰭条を数えることです。

鰭式は、魚のヒレにある骨の数を数えて、その魚がどんな種類かを調べる方法です。
この方法は19世紀から使われていて、昔の科学者たちは、魚をグループに分けるために鰭式を利用しました。

魚のヒレの骨の数は種類ごとに違うので、鰭式を使うと他の特徴と合わせてどの種類かを調べやすくなります。

今でも新しい魚を見つけたり、生き物がいる場所を調べたりする時に、鰭式が役立っています。

男の子
男の子

解剖しなくても写真や映像を使って調べられる手軽で便利な方法ですね。

鰭の表記と数え方

鰭式での各鰭の表記は、それぞれの鰭の英語の頭文字をとって略記していきます。

背鰭=D(dorsal fin)
臀鰭=A(anal fin)
尾鰭=C(caudal fin)
胸鰭=Pⅰ (pectoral fin)
腹鰭=Pⅱ (Pelvic fin)

鰭条の数

それぞれの鰭の鰭条の計数の仕方ですが、鰭と体の付け根部分である基部を見て数えましょう。
鰭条は途中で分岐することもありますからね。

また、鰭には棘と軟条の2種類存在しています。
棘数の場合はローマ字で表し、軟条数はアラビア数字で表記しましょう。

棘条と軟条

棘条(きょくじょう)
棘条は硬くてしっかりとした構造を持ち、魚の鰭を支える役割を果たします。
その強固な性質により、外敵から身を守る武器としても利用されることがあります。

軟条(なんじょう)
軟条は柔らかくしなやかな構造で、動きや操作性に関わる機能を持つ部分です。
魚が泳ぐときの推進力を生み出し、方向転換やバランスの調整に役立ちます。

詳しいことはこちらで解説しています。

表記法

  • 棘数と軟条数はコンマ(,)で連結されます。
  • 背鰭が2基以上あって離れる場合はハイフン(一)でつなぎます。
  • 小離鯺はプラス(+)でつなぎます。
  • 鰭条数に変異がある場合は波線 (〜)でつなぎます。
(例1)
 臀鰭2棘13軟条=АⅡ,13

(例2)
 胸鰭26軟条=Pⅰ26

(例3)
 腹鰭1棘5軟条=PⅱI,5

(例4)
 第1背鰭15棘、第2背鰭3棘に12軟条、8基の小離鰭=DXV-Ⅲ, 12+8


真骨魚類の鰭条は、骨質で形成されており、中央に不対の1本からなる棘条と左右1対の軟条の2種類に分かれる。

A:棘条、B:不分枝軟条,C:分枝軟条

フナの鰭式による見分け方

フナは分類が難しい魚の一つと言われていますが、分類の指標として鰭式を用いることがあります。

先生
先生

それが背鰭です。
種類によっては背鰭の鰭式だけで分類することも可能になっています。

フナ類の背鰭の鰭式一覧

フナの種類背鰭分岐軟鰭条数
キンブナ11〜14本
ニゴロブナ14〜18本
オオキンブナ13〜19本
ギンブナ13〜21本
ナガブナ14〜21本
ゲンゴロウブナ15〜18本

フナの場合は背鰭分岐軟条数を数えていきます。

先生
先生

背鰭分岐軟鰭条数とは、
背鰭の中で分かれている柔らかい部分の数のことです

女の子
女の子

この方法ならフナが背鰭を伸ばした写真だけでも
数えることができますね。

計数時の注意点

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

注意すべき点としては、背鰭の最後の軟条は分岐して2本に見えることがあります。
そのような場合は1本として数えましょう。

先生
先生

写真や生体を数えて15本だった場合は14本かもしれませんから、
この計測を正確に行うためには背鰭を切開しないとわかりませんね。

背鰭分岐軟条数だけで同定できる種類は、キンブナとギンブナが対象です。
最大値である20~21本だった場合のギンブナ、最小値の11~12本はキンブナだけということになりますね。

まとめ

ということで今回は鰭式について解説していきました。

鰭式を用いたフナの分類方法は、魚の観察をより深く楽しむための有効な手段です。
特に、背鰭の鰭条を数えることで、キンブナやギンブナなどのフナ類を見分けることが可能です。

鰭式を理解することで、フナの写真や実物を観察する際にその種を識別できる力が養われるでしょう。ただし、背鰭の最後の軟条が分岐して見えることもあるため、正確な計測には注意が必要です。

今回の解説をもとに、ぜひフナの分類に挑戦してみてください。

鰭式の知識は、魚類の研究や観察において大きな助けとなるでしょう。

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形態学分類学

コメント

  1. 石澤 尚史 より:

    拝見し勉強させていただいております、石澤と申します。

    鰭式の(例)について、ご教示ください。

    (例1)のローマ数字が「I」、(例4)のローマ数字が「II」となってます。これは、それぞれ臀鰭2棘、第2背鰭3棘と理解しましたが、これが式の書き方になるのでしょうか?

    魚のことは全く分からない素人ですので、そもそもの設定の理解が出来ていないかもしれません。
    よろしくお願いします。

    • あおいふな あおいふな より:

      石澤さん、コメントありがとうございます。

      私の書き方に誤りがありご迷惑をおかけしました。
      石澤さんのご指摘の通り、認識に間違いはありませんでしたので、訂正いたしました。

      ご丁寧にご指摘いただき、心より感謝申し上げます。
      今後ともよろしくお願いいたします。

  2. 長岡 寛 より:

    読ませていただきました。参考になる記事かと思います。一つ気になる点としてギンブナの背びれ分岐軟条が13~21となっておりますが、文献(中村1969)によれば16~17となっております。どちらが正しいのでしょうか。

    • あおいふな あおいふな より:

      長岡さん、コメントありがとうございます。
      確かに、文献によってギンブナの背鰭の分岐軟条の数には違いが見られますので、16〜17条が一般的とされるものの、ばらつきがあるのは確かですね。
      私もいくつかの書籍を参考にしていますが、淡水魚保護協会の『淡水魚 8号』には13〜21条と記載されており、こちらも参考にさせていただいています。
      ギンブナは地域による個体差が大きい魚ですので、ぜひあくまで参考程度にしていただければと思います。