今回は透明標本について解説していきます。
最近はその見た目の美しさからインテリアとして高値で取引されることもある標本ですが、学術的な価値がある標本であることはご存知でしょうか。
そんな標本の魅力について解説していきます。
骨格を見る理由
フナを始めとする魚類は、非常に種類も多く、分類や系統についてまだまだ不明な点が多く残されています。また我々とは異なり水中に生息しており、陸に生息している動物にはみられない独特の形態のものが多いです。
そのため、標本を観察することによって魚類の形態や分類に関する知識を深めることができます。
形態の観察を行う際には透明標本が非常に適しています。
というのもこの標本は筋肉を透明にして、カルシウム分である硬骨を赤紫色に染色し、糖分である軟骨を青色に染色されています。
これにより生物を解剖せずに立体的な骨格の配置を観察することができますからね。
透明標本のメリット
それならば透明標本でなくても、普通の骨格標本でもいいのでは?
確かに標本ならば通常の骨格標本も観察の対象になりますね。
しかし骨格標本だと骨の摘出をしたのちに組み立てる必要があり、
正確に組み立てないと骨格すら観察ができなくなりますし、軟骨部分の観察はできません。
さらには小型の個体の場合は骨が小さくて脆く、摘出して組み立てるのはかなり困難です。
その点、透明標本ならばその作業がありませんからね、各骨の位置やその連節、微細な骨の様子も観察が可能ですね。
【透明標本作製法】
透明標本の作製法は以下のようになります。どれも劇薬になりますので、市販では入手できませんから、大学の研究室や研究施設などでしか作成は難しいですね。
- 新鮮な標本を10 %ホルマリン固定後、数日間流水にて洗浄します。
- 鰓や内臓を取り除き、3%H202中にメラニンが褐色になるまで浸漬
3.0.01%アルシアンブルー8GN+95%エタノール・氷酢酸(8:2)溶液中に24~48時間浸漬 (軟骨染色) - 5%エタノール✕2回・70-40-15 %エタノールおよびD.W.中で2~3時間ずつ脱染・洗浄
- 30%飽和ホウ酸溶液100mlにトリプシン18を添加した溶液中に浸漬して透明化を行う(37°C、 2~3 日毎に液交換)
- 0.5%KOH溶液にアリザリンレッドSを濃赤紫色になるまで溶解した溶液中に24~48時間 浸漬 (硬骨染色)
7.0.5%KOH:グリセリン混合液系列(3:1・1:1・1:3・純グリセリン)により脱染(最初の2系列には3%1202を2-3滴/100ml の割合で添加し黒色素胞を漂白、数日間置いても良い) - チモールクリスタルを数粒添加した純グリセリン中に移す(長期保存の場合は、アルコール洗浄後70 %エタノールに入れる)
透明標本のデメリット
作成における難易度の高さでしょうか。
標本を作成するのにあたって必要な薬品は、一般的な薬局では入手できません。
その時点で作成のハードルが格段に高くなります。
また、仮に作れたとしても過酸化水素水など素手で触ると危険な液体も多く存在しますから容易に扱うことも難しいです。
かくいう私も学生時代に透明標本を作っていましたが、
過酸化水素が誤って肌に触れたことにより、数日間肌が白化して痛みに苦しみました。
また、長期間保管しておくと、標本の透明な部分が白く濁ったり、
染色した赤や青の部分が薄くなったりしてきます。
そういう点を加味すると骨格標本の方が扱いやすいですね。
まとめ
ということで、今回は透明標本について解説していきました。
稀に水族館などで販売していますので、興味があれば買って観察してみると面白いですね。
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