魞漁の解説|琵琶湖の漁業

漁業学

ども、あおいふなです。今回は琵琶湖の漁業の中でも、フナとの関わりが深い「魞漁」について解説していきます。
魞とは「えり」と読み、魚編に入るという漢字です。魚が罠に入っていくと言うとてもシンプルな意味合いですね。

エリについて

春から夏にかけて琵琶湖の岸辺には産卵やエサ、すみかを求めて、コイ類やフナ類、アユ、モロコ、その他の多くの魚たちがやってきます。

こうした魚たちをうまく誘導して「ツボ」と呼ばれる畳一枚の広さに満たないところに閉じ込めてしまう定置性の漁具がエリ(魞)です。

エリは遠浅のところでは沖出しも長くて大型となり、2段構造のものが多く、(二段魞)、また、岸辺が急に深くなるところでは沖だしは短く、1段構造(一段魞)が一般的です。

エリの仕組み

図は一段魞の構造を示しています。魚の群れが岸づたいにやってくると、ワタリによっていく手を阻まれ、まずホウライへ誘導されます。

ホウライに入った魚は、遊泳するうちにカガミ→オボロイ→コボライというふうに順次狭いところへ進み、最終的にツボへ落ち込む仕組みになっています。ツボに入った魚は、毎朝ここでエリカキ(魞掻き)されて漁獲されます。

エリは、基本的には簀とそれを支える竹の杭より成り立っています。簀は従来すべて割竹とシュロ縄(またはワラ縄)でできていましたが、近年は塩化ビニール製の管と化学繊維のヒモでできた簀を使うようになりました。さらに簀そのものが使用されなくなり、網がこれにとって変わるようになりました。

現在は過度期にあたり、つぼだけ網のものから、すべてが綱のエリ(綱魞)まで見ることができます。杭については、竹のほかFRP製品が使われています。

簀が網へと代わってきた理由は、その扱いやすさと構築費用の安さにあると思われます。また、杭がFRP製へと代わりつつあるのは、竹がせいぜい2〜3年しか使われないのに対し、多少高くつくものの耐久性に優れ、扱いも容易なことによるものと思われます。

エリの種類 細目と荒目

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エリにはコアユとエビ、ウナギなど主な対象とするホソメエリ(細目魞)とフナ類、コイなどを対象とするアラメエリ(荒目魞)があります。かつてはアラメエリも相当数ありましたが、コアユが河川放流用種苗として脚光を浴びてからは、ホソメエリが琵琶湖のエリの主流となっています。

ホソメエリは細かい雑魚も一緒に捕れるので別にザコエリ(雑魚魞)とも呼ばれています。細目と荒目の区別は、使われている簀の目合いの大きさによるものです。

簀の間隔が1分(約3mm)のものを細目、5分(約15mm)のものをアラメと呼ぶのです。簀を結ぶヒモはかつて細目ではシュロ縄を、荒目ではワラ縄を使用していましたが、現在では、いずれも化学繊維製のヒモが使われています。

アラメエリでは、現在、高島郡の地先でいくつか残存しています。

ホソメエリ

エリは、以前は2〜3月頃に建てられ、その年の7月末頃まで操業されていました。10月〜11月ごろに建てられ、12月から翌年7月末までという具合に創業が早く始まるとともにその間も長くなっています。

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これは12〜2月のヒウオ(アユの幼魚)を対象にするようになったためと考えられます。

3〜7月の漁獲物としてはコアユが大部分を占めることはもちろんですが、それ以外にコエビ、ヒガイ、ウナギ、モロコ、コイ、フナなどがあります。ヒウオ、コアユはいずれも河川放流用、または池中養殖用の種苗として出荷されるものが大半で、一部7月頃のものは佃煮用となります。

先生
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現在では、簀によるエリはほとんど見られなくなり、網魞が主流となっています。

新しいエリ

カワエリ(川魞)・ヌマエリ(沼魞)

4〜7月頃産卵に来るフナ類、特にニゴロブナを対象として琵琶湖に流れ込む小さな河口付近、または小さな沼などに設けられるのがアラメの川魞・沼魞です。

その構造はホウライとツボ、あるいは魚を導入するための簀とツボだけという具合に大変簡単にできています。現在、安曇川町、高島町付近に多く見られ、かつては秋、産卵のために川にのぼるアメノウオ(ビワマス)も対象としていました。

アミエリ(綱魞)

簀を使ったエリは急に姿を消し、アミエリが主流になりつつあります。これは人件費が高くなったことの他、綱魞でも十分にコアユを活かして獲ることができるようになったことが主な原因です。

構造は基本的には従来の簀エリと変わりませんが、ツボの部分は側面以外にそこにも網があり、これらは連続しているので、魚を取り上げるときには網をたぐって魚を一箇所に集めてから救いとります。

まとめ

ということで、今回は魞について解説していきました。

湖の規模が大きく遠浅な琵琶湖だからこそできる漁法でしたね。

後日談ですが、この魞と言う漢字。変換で出てこなくてものすごく苦労しました笑
今は辞書登録したので、「えり」と打つと一発で出てきます。辞書機能は頼もしいですね。

参考文献

琵琶湖の魚と漁具・漁法 1984年
発行滋賀県立琵琶湖文化館
印刷 (有)森田印刷

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