
今回は「学名の読み方と表記」について解説していきます。
私たちが普段使っている日本語の名前(和名)だけでは、同じ生き物を指しているかどうかが分かりにくいことがあるんです。

たしかに、「フナ」って言ってもいろんな種類がいるし、
「ヤマメ」と「アマゴ」も見た目がそっくりですよね。

そうなんです。そんな時に便利なのが「学名」です。
どの国の人にも、どの言語でも通じるように、ルールに沿ってつけられているんですよ。
今日はその読み方や書き方、sp.やspp.などの記号も一緒に見ていきましょう。
学名について

「学名」とは、生物学で用いられる名前の一つで、世界共通の名称です。

私たちが普段使っている日本語の生き物の名前(和名)は、とても便利ですが、あいまいな部分がたくさんあります。
たとえば「フナ」と聞いて、みなさんはどんな魚を思い浮かべるでしょうか?

釣りでおなじみの「ゲンゴロウブナ」?
それとも、学校の理科室にいる銀色の「ギンブナ」でしょうか?

どれも「フナ」と呼ばれることがあります。
つまり、日本語の「フナ」は1つの魚を指しているようで、実はいろいろな種類が含まれているのです。
フナにもたくさんの種類がある
実は、「フナ」と呼ばれる魚はコイ科フナ属というグループに属しています。
この中にはいくつも種類があり、
- ゲンゴロウブナ
(学名:Carassius cuvieri) - ギンブナ
(学名:Carassius langsdorfii) - キンブナ
(学名:Carassius buergeri)
などがいます。これらは見た目が似ていても、生態や分布、遺伝的な特徴が違います。

ところが、日常の会話ではそれらを全部まとめて「フナ」と言ってしまうことが多いんですね。
「この水槽には特別なフナがいます」


たとえば、水族館の説明文に「この水槽には特別なフナがいます」と書かれていたとしましょう。
それだけだと、どの種類のフナなのかはまったくわかりません。
学名を使って「この水槽にはCarassius cuvieriがいます」と書けば、それがゲンゴロウブナだとすぐに特定できます。

このように、学名はどんな地域の人にも、どんな言語でも正確に伝わる共通のルールなんです。
「フナの変種」って言ってもいいの?
また、よくある間違いとして、「フナの変種」と言ってしまうケースもあります。
でも、たとえばギンブナはゲンゴロウブナの「変種」ではなく、別の種です。
- ゲンゴロウブナは「 Carassius cuvieri」
- ギンブナは「 Carassius langsdorfii」
と、しっかり区別されています。「変種」「亜種」といった言葉にも生物学的なルールがあるので、いいかげんな表現では正確に伝わりません。
学名が必要な理由
人々の生活に利用されることの多いもの程、その地方、地方で固有の呼び方があります。
(例:ギンブナ、マブナ、ヒワラ、ホンブナ)
しかし、異種同名や同種異名があると、時には混乱を起こしえます。

さらには国によって名前も異なってきますから、学会などで共通の名前や言語で統一する必要があります。
そこで、名称を全世界統一しようというものが学名であり、国内で統一を図ったものが標準和名になります。
学名のルール
学名は1758年に「分類学の父」と言われたカールフォンリンネが著した『自然の体系』にはそれまで知られた属名と種小名の2つ、つまり二名法で表すことを提唱しました。
生物の学名は、どの言語が由来であっても、「ラテン語」および「ギリシャ語」の表記にて表記されます。
ラテン語とは
古代ローマの言語で、現在は学術・医学・法学・宗教などで共通語として使われています。
語源や用語の理解にも役立ちます。
現在は国際動物命名規約、国際藻類・菌類・植物命名規約、国際原核生物命名規約が生物の命名の基準となっています。
命名の法則

- 属名の先頭は大文字。それ以外や種小名は小文字で表されます。
- 属名や種小名等は斜体(イタリック体)で書き、それ以外の記号は通常の表記です。
- 属名と種小名だけで種を指し示すことはできますが、最後に命名者や命名年号を表記する場合もあります。
原則として生物の種類1種に対して学名は1つと決まっています。
また世界で初めてその字を発見した人が名付ける決まりとなっています。
種より細かい分類の場合、種小名の後に亜種小名などを付け加えます。これを3名法といいます。

フナの学名で試してみる事こんな感じになります

<例> ニゴロブナ
Carassius auratus grandoculis Teminck et Schlegel, 1842
属名 種小名 亜種小名 命名者名 命名年号
学名の省略と記号(符号)ってなに?

今回は、学名を使うときの“省略”や“記号の使い方”について解説していきます。
1. 学名の省略(短くする方法)
学名は「属名+種小名」という2つの言葉からできています。
たとえば、ゲンゴロウブナの学名は 「Carassius cuvieri」です。
でも、何度もこの長い名前を書くのは大変なので、同じ属名(この場合は Carassius)が出てきたときには、2回目からは頭文字だけにしてもOKです。

例えばこんなふうになります
- C. cuvieri(ゲンゴロウブナ)
- C. auratus langsdorfii(ギンブナ)

ここでの「C.」は「Carassius(フナ属)」の省略なんですね。

ただし、他の属と頭文字がかぶっていないときだけ使います。
2. 「sp.」「spp.」ってなに?

学名の後にある「sp.」ってなんですか?

sp. は「species(種)」の略です。
「フナ属のどの種類かはわからないけど、とにかくフナ属の魚です」というときに使います。
Carassius sp. →「フナ属のどれかの魚(不明種)」
もし複数いるけど種類が全部わからないときは、複数形の spp.(エス・ピー・ピー) を使います。
Carassius spp. →「フナ属の複数の魚(種類不明)」

これらは、まだ研究中だったり、詳しい専門家がいなかったり、新種の可能性があるときによく使います。

特にフナは見分けが難しいですからね
3. 亜種(あしゅ)の書き方
亜種というのは、「同じ種の中でも地域や見た目がちょっと違うグループ」のことです。
たとえば、もし琵琶湖原産のゲンゴロウブナでも地域によって違う特徴があるグループが見つかったら、こう書くかもしれません。
Carassius cuvieri cuvieri

このように、もとの種名を2回書くと「基亜種(きあしゅ)」といって、
基準になる亜種であることを示します。
※ちなみに「ssp.」という記号は植物で使用するので、コイやフナのような動物には使いません。
まとめ

ということで、今回は「学名の読み方と表記のルール」について解説していきました。
学名を知っておくと、同じ生き物を正確に伝える力がぐんと高まります。

これから図鑑や水族館で学名を見かけたら、
「これは属名で、こっちは種小名だ!」って分かるようになれそうです!

その調子ですね。
読み方や書き方のルールを覚えておくと、
生き物のことをもっと深く知ることができますよ。
コメント
愛知県津島市では鮒の稚魚をはえ と言います 苦味があって 私は 好きです。娘に蝿と間違われ 聞いたこと無いと言います。ビックリして 調べて見ても出てきません。今日津島に行って懐かしかったから鮒味噌と一緒に買ってきました。73歳です。
こんばんは、コメントありがとうございます。
フナの稚魚をはえと言われるのですね、確かに若い子だと魚よりも昆虫が先に思い浮かびますよね。
小魚(ハヤ)の事をハエと呼ぶ地域がございますので、フナをはえと呼ぶのもそれが関係しているのかもしれませんね。
津島の鮒味噌美味しいですよね。私も立ち寄ったら買いたいです。