今回は魚の子供時代の生活について解説していきます。
魚の世界はとても不思議で魅力的です。その中でも、フナは私たちの身近にいる魚の一つです。
フナの一生を知ることで、彼らがどのように成長し、環境に適応しているのかを理解することができます。
この記事では「フナの子供時代」
つまり仔魚から幼魚へと成長する過程について詳しく解説します。
5月から6月にかけて、川や池では小さなフナを見かけることができますが、彼らはどのようにしてこの世に生まれ、成長していくのでしょうか?
卵から孵化して、どんなものを食べて成長するのか、一緒に見ていきましょう。
卵と孵化
フナをはじめとした多くの魚は卵で生まれる卵生です。
卵のサイズや一度に産卵する卵の数はさまざまです。
多くの場合産み落とされた卵や仔稚魚の多くは親の保護を受けずに成長します。
その分多量の卵を産むことで、多種多様な繁殖戦略を取りながら子孫を残して種の存続を行なっています。
フナは粘着卵で水中に産み落とされ、
20℃前後の水温では4日ほどで孵化します。
仔魚〜幼魚
フナに限らずほとんどの魚は、卵から孵った時には鱗や鰭条は未発達であり、外見も成魚とは大きく異なっています。
この段階の魚を「仔魚」と言います。
体内を見ていても鰓や鰓耙、咽頭歯や消化器官など餌をたべるための器官が未発達でまだ餌を食べることができません。
フナの場合は、体長8mmくらいからだんだん体の作りが徐々に変化していき、
16mmくらいになると成魚のほとんどが同じ体の作りになります。
こうして成魚とほとんど同じ体の作りになった段階の魚を稚魚と呼びます。
発育
多くの魚は、仔魚の段階から弱肉強食の世界の中で外敵からの捕食を避けて自らのエサを探しながら適切な成長環境へと移動しなければなりません。
このため、仔魚の生存率は極めて低く、稚魚の段階まで生存できる個体はごくわずかで種によっては0.01%まで減少していきます。
これを「初期減耗」といいます。
仔魚時代の生活史
まだフナらしい見たしい見た目ではないんですね。
卵から孵ったフナの仔魚は体にまだ栄養が残っています。卵でいう卵黄の部分ですね。
生まれてすぐの段階ではこの栄養を吸収していき、成長していきます。
2日間ほどで栄養を吸収していくと体がおおきく軽くなり、体が浮いてきます。
この状態から仔魚はようやく餌を食べ始めます。
水面近くに浮上してきたフナの仔魚は周りの動物プランクトンを手当たり次第に食べるようになります。
最初に食べるエサは繊毛虫やワムシなどの小さな動物プランクトンになります。
こういう動物プランクトンはフナの仔魚が生まれる頃には水中をたくさん泳いでいます。
数日も餌を食べ続けると体重が2倍になる程に成長してきてます。
そうなるとやや大きな動物プランクトンであるゾウミジンコを食べようになります。
また、この時期に大きなタマミジンコを食べようとすると、喉を詰まらせて死んでしまうこともあります。
仔魚時代の食事も命懸けなんですね。
稚魚時代の生活史
稚魚になると体の構造が成魚に近づいていき、生態もフナらしくなります。
フナが仔魚から稚魚になってもあいかわらずミジンコを好んで捕食するようになりますね。
咽頭歯の発達
やがてミジンコの数が少なくなるとカイミジンコも食べるようになります。
カイミジンコは体を殻で覆っており、空に閉じこもってしまうと硬くなり、
仔魚では簡単には食べることができません。
しかし、稚魚になり成長していくと喉の奥にある咽頭歯がある程度発達してきますので、
土の上に見られるカイミジンコを吸い込んでから、咽頭歯で噛み潰して食べることができます。
咽頭歯についてはこちらでも解説しています。
鰓耙の発達
また、鰓の根本にある鰓耙が発達ていきます。
鰓耙で泥の中にいる動物を泥ごと吸い込み、鰓耙で動物を濾しとり、鰓から泥を吐き出すという食べ方が可能になります。
ミジンコが減てくる時期になると土に身を潜めたユスリカの幼虫であるアカムシを食べるようになります。
また、土の上にいるごく小さなツキガタワムシもこの頃から食べられるようになります。
このように餌を食べ始めた稚魚は1日で体重が1.5倍近くに増えるほどに急成長していきます。
鰓耙についてはこちらもご覧ください。
高温・低酸素に強い仔稚魚
フナは田んぼで産卵し、成長していくこともあります。
そんな田んぼですが、水深が浅くて水の動きも少ないので、日中は水温が40度近くになることも少なくありません。
変温動物である魚類は高温の環境では体温が上昇してしまい、生きることが難しく、実際にギンブナの成魚では水温が36〜37℃の環境では数時間で死亡してしまいます。
しかし、フナの仔稚魚は40℃近くなる田んぼでもほとんど死ぬことがありません。
小さいうちの方が高水温に強いのかもしれませんね。
また、フナの仔稚魚は酸素が少ない環境でも生きていけます。
体長が13mmまでの仔魚は溶存酸素量が6%ほどしかない低酸素な環境でも生息していたフナの半分が生き残ったという記録があります。
さらに、仔稚魚は餌を食べ始める頃なると水面に浮き上がりやすくなりますから、
水底が無酸素になってしまっても水面に溶け込んでくるわずかな酸素で呼吸することができます。
このようにフナの仔稚魚が酸素不足にも耐える力は、
酸素不足にも強いコイ科魚類の中でもトップクラスになりますね。
まとめ
今回は、フナの子供時代について詳しく見てきました。フナの成長は、自然の中での競争や捕食の中で行われます。そのため、仔魚や稚魚としての生活はとても厳しいものです。
多くの仔魚が生き残れない中で、成長していくフナたちの姿を見守ることは、私たちにとっても大切な経験です。
彼らの成長を支える自然環境を大切にしながら、これからもフナの一生について学んでいきたいですね。
フナの成長を通して、私たちも自然の不思議さや生き物たちの命の大切さを感じていきましょう。
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